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2011'01.26.Wed

こんにちは

 こんばんは、皆様。管理人です。

 何事もなるようにしかならないかな……と、考えている最近です。新年早々凹みまくったので、下の記事も凹んでいるのですが、今のところは何とかなってます。

 ということで、日付変わってしまったのですが、健忘ネタの一場面的なものを打ってみました。あと、急いで、春摘みの後の話とかの冒頭とか打ちたいです。


「……何だ」
「失礼致しました」
 思わず目を伏せた弥勒である。
 その威圧的な声と視線に、彼は思いだした。ここ暫く生ぬるくて忘れていたが、自分は嫌われているのである。
 否、蔑まれていると云っても、嘘ではない。自嘲でもなく、謙遜でもない。
 瞳の奥に潜む光とか、口端に上がる表情が何だというのだ。そんなもので推し量る易しさではない。
 彼が厭うのも無理はない。
 飲み込んだ唾液の奥で、今度こそ弥勒は自嘲した。
 神学校を卒業し、配された先は西牙。王ではなく王妃が統べる国とは、この大陸の常識だ。それだけではない。弥勒のように唯一神とその神下を崇める人種からは、特別な瞳に映る国。それが、かの大国である。
 はたして、大国と呼んで良いものか。
 これが四十年も前ならば、ただの戯れ言だっただろう。確かに、教団は西牙国を特別視していた。それを云うならば、千年帝国と謳われる魔の国も同様だ。この国は特別中の特別で、歴代の王は世襲とは限らない。全くの他人でもないが、王と認められた血族者にしか継承は許されぬ。
 何しろ、歴代の王は常人ではない時を得る。だからこそ、たった一つの血筋が千年近い時間を維持してこられたのだ。
 教団創設前、おとぎ話の住人が跋扈(ばっこ)していた時代の名残。
 しかし、時は移ろう。
 化石のような、あの魔の国とて、最早かつての力を持たない。幸いにも教団はまだその事実に気が付いていないが、西牙国は千年帝国の喪失を、王の永き時が失われたのを知っている。
 だからかもしれない。
 摂政は散々周囲から言い寄られてきた長子の縁談に対し、明確な答を示さなかった。殺生丸が十代後半になっても――だ。
 彼女といえども、一児の母。熟考しているのかと思っていたが、そうではない。そうではなかった。
 西牙国は今後失われるだろう、おとぎ話に変わるものを模索しているのだ。
 魔法と呼ばれる力は廃れる一方。千年帝国の軍部を支えていた獣人は出生率の低下で、減るばかり。獣の姿を維持出来る者は限られ、もう王と王位継承者を守るだけの数しかいない。
 それは、この国でも然り。
 王の特出した戦闘能力だけに頼る戦い方は、時代遅れだろう。新たな時代には新しい戦い方と守り方が必要だ。いくら飛び抜けて強くあったとしても、一騎当千とも戦神とも呼ばれようが、一個人では無理なのだ。
 その特別だという存在に会うことを、弥勒は楽しみにしていた。無論、金と銀に彩られた王族は教団でも有名で、外面の評判は十分に耳にしている。美貌の摂政が時の聖皇(せいてい)に詰め寄り、借金完済したと大陸の語りぐさにもなった。
 惜しげもなくその容色を使い、神の僕と謳われる聖職者達を惑わした魔女などと誹る者もいるが、本人に云わせれば惑う方が馬鹿らしい。表面の凹凸と面の皮一枚程度に騙されるぐらいなら、最初から政に口出しなどしなければいいと断言するほど。
 そんな美しすぎる有能な妻を娶りながらも、本命は別だと噂される国王にも弥勒は興味があった。むしろ彼等を両親に持つ息子はどうでもよかった。二番煎じに興味はない。
 優秀な優秀な王子様。
 完璧なる世継ぎの君。
 万能過ぎて反吐が出そうなほど出来た長子は、弥勒のすぐ側。レプリカのように目映い金と銀に彩られて呟く。
「……あの女、何なんだ」
「さて」
 突き放したような相槌に、途端殺生丸は渋い顔をした。
 城勤めの若き司教の持ち部屋は、それほど豪華な作りでもない。というか、そもそも此処が彼の私室ではない。その隣にある、こぢんまりとした控え室の方。だが、居留守を使うにはもってこいの場所だった。
 ―――で、この広いとは言えない手狭な場所で、男と二人きり。しかも片方は片親譲りの長身で、先天的な圧迫感の持ち主だ。これが心地よいはずもなく、互い不快しか生み出さない。何たる不毛、馬鹿馬鹿しい限り。
 それでも、他に行き場がないのだから仕方がない。王子の私的領域には、現在見知らぬ他人が生息中で、彼のプライベートは脅かされていた。
 そう、最愛の妻から逃げているのだ、この男は。
 殺生丸が不機嫌なのは明らかであり、明白だ。十中八九、原因は妻である妃殿下の事だろう。世継ぎの君が妻と一緒に暮らせるようになって数ヶ月、いわゆる蜜月だった二人に別居の二文字がちらついたのは半月前。
 目前の高貴なる男が、よりにもよって健忘などになるからだ。正直、こんな愉快なことが世の中にあるなんて、何たる采配。神の御業として後世に書き記したくなる。
「アレは……一体どういう生き物なんだ?」
「それも、さて」
「こういう時こそ、何とかするのが貴様の役目だろう」
 不機嫌そうに言い捨てて、殺生丸は紅茶に口を付ける。苦いという定番の台詞も忘れなかった。
 ああ、全くこの傲慢な物言い、確かに十代の頃だ。自らが何者であるか理解し、その上で取り巻く他者が何たるかを分かっていた王子様。
 今もそうだ。親から与えられた友人を大人しく享受しているからこそ、役目をこなせと文句を云うのだ。義務を果たしのだからと、弥勒に代価を命じるのである。とはいえ、自分の口は安くない。
「殿下に分からぬ事を、一介の聖職者である私に分かるはずありません」
 澄まし顔で司教はそううそぶいた。

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