--'--.--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告:  トラックバック(-)  コメント(-) 
2011'03.27.Sun

駄犬ネタ

 こんばんは、皆様。お休み前の管理人です。

 一月の末に載せた駄犬ネタが放置プレイだったので少しだけ続きを打ってみました。お絵かきも楽しいですが、こうやってテキストを打つのも楽しいです。
 ということで、少ししか打ってないので、最初から改めて載せることにしました。



 永久欠番した乙女の日が通り過ぎて三巡り、北国の花見シーズンも完全に終わりを告げ、観光も一段落した今日この頃。見上げずとも星空が舞う時刻であることは分かっていた。
 鐘山りんは自転車から下りると、携帯を取り出す。ちなみに壁紙は初期設定のままだ。サークルの先輩のように恋人の写真とかにはしていない。迂闊に、そんな恐ろしいこと、出来るはずもない。
 むしろ、イヤだ。絶対に出来ない相談だ。そんな羞恥プレイ、死んだ方がある意味マシかも知れないとまで、思ってしまう。りんの見知った相手も、流石にそんなお茶目なことを自発するような質でもなく、今のところ彼女の携帯は平和を満喫していた。
 否、本日は違う。
 今日は違うのだ。
 今夜の携帯の着信履歴には有る筈の無い番号が一件残っていた。そもそもりんの借りたアパートは、学生専用で、しかも女性専用。家電は一通り揃っており、電話までちゃんとついている。まあ、もっぱら携帯の使用が多いので、基本料金が勿体ないような気もするが。
 その殆ど未使用のりんの電話の番号が、何故か今夜携帯の履歴に残っていた。
 うっかりマナーモードにしたまま放置プレイし、尚かつ気が付いたのが着信三十分後。友達の、美味しいお店知っているという台詞に惑わされたのが運の尽き、事実嘘偽り無いその味に理性が麻痺したのが悪いのか。満月だということをデザート前に思い出したのが、ダメだったのか。いや、何もかも遅すぎたのである。
 画面を見た瞬間思考が硬直し、現在に至る始末。
 結局、美味しいらしい名物パフェの味は分からず終いで、タイムアウト。どころか、友人達に緊急事態とばかりに挨拶もそこそこで家路についた訳だが……。
 りんは今一度携帯を見て、溜息を一つ。
 履歴には、紛れもなくアパートの方の家電番号。見間違いなどしていない。
 理由は分かる。
 この世でりんだけが分かる、この理由。何しろ、本来誰もいないはずのりんの部屋に存在出来る相手など、限られている。しかも、携帯へ電話出来る人類となると、もうたった一人しか思いつかない。
 まさか、サプライズ的イベントで親族がやって来たという、オチもあり得ない。それは既に確認済みなのだ。
 答は一つ。
 真実は一つだけ。
 りんは自分の部屋のドアを見詰め、ガックリと項垂れた。
 未だ、部屋に入る気になれない。



 天上にまん丸のお月様が顔を出すと、りんのペットはチワワ似の小型犬から、むさい全裸の男となる。とはいえ、りんに変な趣味はないので嗅いだり凝視したりという変態行為に及ぶ事もない。むしろ、この世から撲滅したい気満々で、署名活動も辞さない程。
 そのヘンタ…もとい、不運な状況に貶められている相手だが、名を殺生丸と云い、自称王子様という生き物である。多分、出身地はお伽の国だろう。二次元でもあながち間違っていないかもしれない。
 何しろ、その気になるようなハイスペックさを兼ね備えた人物なのだ。ビジュアルだけなら、万国共通の世界遺産クラス、多分能力値もチート級。一応、褒めたつもりである。
 ひょんな事と評するべきか。そもそもりんは、吹雪の中見つけた子犬を良心に委ねるまま拾っただけだ。ところがどっこい玉手箱、結構なアタリを引いてしまったらしい。呪われし王子という陳腐な相手は、満月の晩だけ犬から人へと変身する。しかも、服は自動装着されないときた。半端なリアルさと被害甚大なチープ感がまさに悪趣味丸出しで、術者の性格を窺わせる。
 兎にも角にも、男の裸体というものは視界に入れたくない。認識もしたくないので、彼にはいつもシーツでぐるぐる巻にしてもらっているのだ。無論、消臭殺菌済みなのは云うまでもない。ついでに云わせてもらえば、洗濯も別。出来れば、彼専用洗濯機とかが欲しいくらいだった。
 中綿入りのコートから季節に合わせて服装も様変わり。和製英語でお馴染みの大連休も過ぎた月半ば、りんはアパート前の砂利を踏みしめ立ちん坊。伸ばしっぱなしの髪が背で揺れる。
 二階建ての桃色アパートは、以外に家賃が良心的で建物もまだ新しい。生活に必須な家電は勿論、前の住人が置いていってくれた自転車まで付いてくるという、ありがたいりんの新居である。
 ただし、女性専用と云うだけあって、異性は御法度、厳禁、出入り禁止とまではいかないが、一緒に住むのはアウトとされている。これに一抹の不安が残るが、まあ多分……何とかなるだろう。上の階の人は既に彼氏持ちらしく、この間それっぽい場面に出くわし、いたたまれない気持ちになったばかり。
 装飾無しの簡素な金属のドアの向こう側を思うと、のしかかる憂鬱に背が丸まってしまう。
 りんは夜空を眺め、また溜息を一つ。
 一度部屋に帰れば良かったのかもしれないと思いつつ、そんなタイミングが何処にもなかったのだから仕方がないと……思うのだが。思うのだが、多分それであっさり事態が解決はしないだろう。
(………)
 それよりもだ、問題は目前。
 ドアを開けるべきか、否か。
 回れ右をするのは簡単だが、生憎と今のりんには一泊頼める当てがない。夕食が一緒だった友人達を頼ればきっと、根ほり葉ほり聞かれてしまうだろう。そうでなくとも、慌てふためく自分の背へ「彼氏ー?」とかいう声が投げかけられている。
 明日に引き延ばせる現実を、今すぐ短縮する必要はない。全くない。
(……というか、彼氏なの…かな? かかか、彼氏とか、そういう感じとかじゃないしっ)
 外気よりも急上昇し始める頬を押さえ込み、りんは玄関前で百面相のオンパレード。無理もない。まだまだ、彼女には慣れない、馴染めない現実なのだ。
 しかも、普通の恋人などと違い、初々しくデートをすることも、うれしはずかしのメールのやり取りもなく、初っぱなから突き付けられるのは、同居の二文字。
 間違っていけないのが、同棲ではなく、同居という言葉選びである。
(そ、そんないかがわしい関係じゃないし、いかがわしくなるつもりなんて、これっぽっちもないんだから……恋人とかじゃなくて、婚約者な…だけ!)
 そう、日本語は大切だ。恋人やら同棲などと記すと、どうも破廉恥な気がして、りんの正常心が保てない。それにくらべ、同居や婚約者の何と他人行儀なこと。
 確かにりんにも結婚願望はあるが、相手がいるからといってイコールで不埒な関係になりたいなんて思えない。そもそも考える自体、彼女の脳みそは拒絶する。
 満場一致の否決に決まっているのだ。
 清く正しく、美しく。これぞ、乙女の生きる道。とはいえ、向こうは異性な訳で、腕力では惨敗してしまうだろう。しかしながら、王子という肩書き付きの人間が軽率で野蛮であるとは思いがたい。
(そ、……それに、キ、キスだって許可制にしたし……)
 その他諸々、りんは自身のプライベートの為に色々な取り決めを、彼との間に交わしたのだ。
(ふ………深いのだって、してないから)
 だから、大丈夫とはあり得ないが、万が一のことにならないだろう。ただし、このドアの先、彼が怒っているかも知れない可能性は九割九分。残り一分は、寂しがっているという、ペットとしての模範解答だが、彼に限ってあるとは思えない。
 殺生丸に怒られるのはいい。説教でも、正座でも、何でもござれ。けれども、恥ずかしいことを強要されたら、どうすればいいのだろう。
 頭を抱えてしゃがみ込んでいる場合ではない。場合ではないが、他の手だてを思いつけない。そんなこんなで、砂利の上でのしゃがみ込みも三十分経過した頃か。
 身震いする携帯に慌ててりんは出た。
「そろそろ、部屋に入らないか?」
 全くもってその通りな、駄犬の台詞であった。

 では、お休みなさいませ。
殺りん劇場トラックバック(0)  コメント(-) 

トラックバック

この記事のトラックバックURL

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。