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2013'05.12.Sun

MySweetAutomata

こんばんは、ぴくしぶにあげているオートマタの一話目も載せておきます。
どの環境でも読めた方がいいかなとかも、最近思うのです。

【MySweetAutomata】



 遠いような、近いような、そんな時代。
 これはそんな頃のお話。


 土地付き庭付き一戸建て、オマケに素敵なペットまで貴女の生活に潤いを……とは、ちまたで流行のキャッチコピー。もう、かれこれ十年近くは定番となっているフレーズだった。
 テレビをつければ、必ずゴールデンタイムには流されるCM。
 今では小学生でも知っているもの。
「ただいま~」
 元気よくご挨拶するのは、小鳥も恥じらう愛らしい声。ぱたぱたと駆けてくる人影は、何処からどう見ても子供だろう。
 ぴょんとしっぽのように、片方一房だけわんわんの髪飾りを付けて、パステルピンクのランドセルを背負った少女が帰ってくる。玄関を通りすぎ、いの一番に入ってきたのはダイニング。キョロキョロと周囲を見回すと、お目当てのものをみつけたのかダッシュして抱きついた。
「殺生丸様っ、殺生丸様っ!! りん、帰ってきたよ」
 そこにはエプロン姿の男性が一人。振り向き様ランドセル姿の少女を抱き留める。対面式キッチンなのだろう。シンク側に彼はいた。
 目に眩しいプラチナが、窓からの日に輝く。男性にしては色白で、だからといって貧相でもない。それなりに均整良く、いやどう悪く見てもスタイルは特上の出来だろう。足は長いし、顔は小さめ。勿論胴は無駄に長くなく、厚めの胸板が逞しさを感じさせる。
 それでいて、妙に色気がある。
 黒のシャツを着崩しているので、覗く鎖骨が色っぽいのだ。捲りあげた袖から生えた二の腕と云い、こんな相手に抱かれたら、どんな女性さえも嫌がりはしまい。
 そう、例え犬ような耳が生えていたとしても、軽蔑する異性はいないだろう。
 人々が新婚旅行に月へ行くことも可能な程科学が進歩した昨今、一番人類を惹きつけたのは人工的に作られた愛玩用ペットの存在だった。初めて人間の前にお目見えしたのが、二十年前。猫や犬と云った既存の動物の複製ロボットに過ぎず、ほほえましいものであった。
 それが信じられない進化を遂げたのが十年前だ。
 オートマタと呼ばれる新シリーズの登場である。名の由来はそのまま自動人形を指している。
 つまり、人間の形をした愛玩ペットだったのだ。
 制作者は当時ロボット制作の天才と謳われた、狗神博士。その能力は従来の愛玩ペットを超越しており、まるで人間のような出来映え。特に素晴らしいのが、人間の持つ愛情という感情を感知し、それによって生命維持活動をすることだろう。Love回路と呼ばれているこのシステムは、まさしく愛玩ペットに相応しい、究極の存在だった。
 回路の導入により、ペットと飼い主との親密さが跳ね上がったのは云うまでもない。また、動物型の愛玩ペットの名残か。オートマタシリーズは、どのデザインだろうと必ず動物の耳を備えていた。
 狗神博士の作った愛玩ペットの完成度の高さは、十年経った今でも廃れはしなかった。但し、市場に出回る商品はそれにくらべればオモチャのようなコピーにしか過ぎない。何しろ、とんでもない発明品なのだ。あまりも凄すぎて、そっくりそのままコピーするのは不可能だと云われるほど。外見も中身も、神業級の出来映えだったのである。
 とするならば、ランドセル姿の少女が抱きつく相手は云うまでもなく愛玩ロボットのオートマタシリーズだろう。
 しかしながら、とても大量生産型の廉価版とは思えない。外見からして途方もない秀麗さを持っている。オーダーメイド品にしても、信じられないほど細やかな作りをしていた。
 甘えたにゃんこのように女の子は愛玩ペットに抱きついたまま、その腕の中をたっぷりと満喫する。
「殺生丸様、今日のおやつはなぁに?」
「今日はりんの好きなものを用意してある」
「え、本当? わーい、殺生丸さまぁ、大好き!!」
 少女はぱっと綻び、ひまわりのごとく大輪の笑顔を見せる。彼女の喜びを示すように蜜柑色のワンピースが揺れる。
 つられてだろうか、愛玩ロボットの方も微かな笑みを浮かべた。元々がクールと思わせる、氷の美貌。切れ長の瞳はつり目で、鋭さを秘めた黄金色。すっと通った鼻筋は、彼のプライドと気位の並々ならぬ高さを示すだろう。彫り深く、東洋人とは思えない。
 口元も同様で、お人好しとは果てしなく縁遠い雰囲気を漂わせていた。
「りん、それもいいが……帰ってきたら、帰宅の挨拶をしないのは悪いな」
 優しく、真綿で撫でるような声で、彼は少女を諭す。それから、自分よりも小さな手を両手で包む。スキンシップなのかもしれない。
 すると、女の子はちょっぴりシュンとなる。うつむき、それから上目遣いに相手を見た。まあるい、黒瞳が男を映した。
「ご、ごめんなさい……殺生丸様、もしかして怒ってる?」
 しかし、ロボットはゆっくりと首を振る。彼の銀髪が左右に動く。瞬きし視線を合わせるようにのぞき込む。
「りんに怒ったりはしない。お前は私のマスターだろう?」
 そう、驚くべき事を云ってのけたのである。
 本来、愛玩ペットのオートマタシリーズは大人向けの商品とされている。対象年齢が、基本的に20歳以上なのである。正確に言えば、子供と学生は持つことが出来ず、社会人のみ買うことが出来るアダルト玩具。無論、怪しい意味ではない。大量生産の廉価版と云えども、それ相応の値段がするのだ。とても、お小遣いで買える品物ではなかった。
 しかも、銘はあの『殺生丸』。
 事実、彼は特別製。この世に一体しか、存在しないだろう。
 何しろ、超、曰わく付きの愛玩ロボットだったのだ。



 煌びやかな明りは、眩しいほど。豪奢なシャンデリアは、古き時代より伝わるホテルの装飾である。昨今、ダイヤと言えば人工物が主流だが、この頭上輝くシャンデリアはそんな、有り体の物ではない。
 今夜の舞台、老舗の一流ホテルの目玉とも言える、天然もののダイヤであった。今時、珍しいではすまされぬ。それどころか、値が付けられぬ高値だろう。その途方もないアンティークの照明のもと、今宵のレセプションは幕開けていった。
 愛玩ペット業界といえば、もう十年程経つだろうか?
 従来のペットロボットから、飛躍的に進化したその姿は、まさしく人間そのもの。ペットという定義からかけ離れた能力を持ち、それこそ万能人形に近いと言われている。この業界がドル箱と呼ばれる所以は、そこだろう。
 特に、五年ほど前に公開された新型の愛玩ペットは、まさしく言葉がない出来映え。ぐうの音さえでない。
 この業界に革命を起こしたほどであった。
 名を闘牙といい、ロボット研究者の天才とも呼ばれる狗神(いぬかみ)博士が作成した物であり、最初で最高の愛玩ペットと言われている。現在はこのタイプのコピーが主流で、廉価版が大量生産されていた。とはいえ、オートマタシリーズの特徴でもある外観に関してはオプションで自由に選択可能なため、飼い主の好みに幾らでも変えられる。
 また性格も買ったばかりは真っ新なので、従来のペット同様一から教育すれば、自分の好みのままの相手が出来上がるのだ。生命維持に必要な愛情さえ惜しまなければ、至福のペット―――それが、手に入る。
 ちなみに、全オートマタシリーズのオリジナル闘牙の方は、狗神博士の愛娘の十六夜嬢の側で、今もなお起動中。
 亡き父親の跡を継ぎ、ロボット研究者になった彼女のサポートを勤めているという。
 そして、今夜はその愛玩ロボットの金字塔『闘牙』をも越える次世代愛玩ペットロボットの初お目見えの日。
 しかし、悲劇はこの夜起こった。
 後の世、業界人から暗黒のレセプションとも、魔王光臨とも噂される次世代用に作られたオートマタシリーズの銘は―――『殺生丸』。
 彼は、その美貌にしても、その能力にしても、その頭脳にしても、今世紀最大の品物となる筈だった。
 そう、何もかも完璧な筈だったのだ―――ある一点を覗いては。
 それこそが不幸を招いたる原因と、呼べただろう。



「で、でも……殺生丸様寂しいと死んじゃうわんこさんだから……りん、ごめんなさい」
 幼い顔できゅっと眉を寄せ、エプロン姿の愛玩ペットに彼女はすり寄る。ランドセルを背負っていると云うことは、小学生と分かるだろう。しかし、オートマタの主に子供はなれない。何よりも、彼女は幼すぎた。
 また、『殺生丸』という銘の愛玩ロボットは、本来存在するべきロボットですらない。五年前のレセプションにおいて、廃棄処分されている筈なのだから。
 けれども、幼子をマスターと呼び、慈しむのは『殺生丸』本人。もし、かつての彼を知る者がいれば、信じられないと首を振るだろう。もしくは、あまりの恐ろしい光景に失神するかも知れない。それほど衝撃な姿だったのだ。
「りん、謝らずともいい。必要ない」
 彼は自らの主の名を紡ぐ。
 そう、殺生丸のマスターは鈴宮りん。小学四年生、正真正銘の子供である。
 五年も前の夜、今世紀最大の愛玩ロボットが誕生するはずだった。
 『殺生丸』という銘の愛玩ロボットは、その為に作られたオリジナル。かつての天才が作った闘牙を越えるべく、とある有名企業が総力を決して制作した品物。
 実際、このプロジェクトに関わったのは、皆業界では名の知られた研究者ばかり。誰よりも秀でた頭脳を持つ、集団だったのだ。
 日々彼等は研究し、天才とも奇才とも云われた狗神博士を超えようと、躍起になった。睡眠を削り、食事を削り、ラボという建物にこもり、ひたすら、ただひたすら制作に没頭した。
 果たして、結果は確かに出た。
 赤子の世話から、要人暗殺まで、何でもござれの万能愛玩ペット『殺生丸』の誕生となったのだ。発売手前まで、遂に漕ぎ着けたのである。残りは、実際テストするのみ。彼等のスポンサーである有名企業の会長はそのモニター役に、自らの愛孫を指定したのであった。もしかすると、それがそもそもの間違いか。
 『殺生丸』という銘の愛玩ロボットは、本当に秀でた出来映えだった。まず、これ以上はない結果を生み、失敗知らず。研究者達は誰もが機械の打ち出す数値と、ロボットの成果に酔いしれた。自惚れていたのかも知れない。
 欠陥に気が付かないまま、レセプション当日を迎えてしまったのだから。
 ごく平凡なキッチンで、殺生丸はりんを見詰めながらすべらかな頬を撫でていた。不満などまるでないという顔を見せる。
「挨拶は分かるな?」
 尋ねられ、りんはうんを首を縦に振る。
 彼と彼女の約束事があるのだ。忘れてはいけない、お約束。
 少女はにっこりと微笑んだ。
「ちゃんとお帰りなさいのごあいさつするね。殺生丸様、大好き!」
 そう言うが早いか、戸惑うこともせず無邪気にほっぺへ口付けた。定番のようにチュッという音を立て、唇をぺったんこしたのだった。



 男に嫌がる素振りはない。むしろ快く受けていた。
 ランドセルを背負ったまま、小さなりんは殺生丸へと口付ける。伏せた睫毛の影が頬にかかり、スミレを含んだような可愛らしい唇が躊躇なく男の元へ。勿論、ほっぺという場所は決まっていたがキスであることに変わりなし。
 正直、微笑ましいではなく、いかがわしい気がするのは……相手が殺生丸であるかも知れない。
 それから彼は立ち上がり、少女の手を引く。
「りん。手を洗ってきたら、おやつにしよう」
 けれども、どうしたことか。少女は動き出さなかった。きゅっとスカートを握りしめて、上目遣いでお強請り体制。ウルンとさせた瞳がなんとも愛らしい。膝小僧の前で両手がゆらゆら揺れていた。
「………」
「……りん、どうした?」
 眉を寄せて恥ずかしそうに、だが頑張って云ったのはささやかな願い事。他の誰でもない、彼女のわんこさんへのお強請りである。
「あ、あのね、りんにも……ただいまの…ご挨拶して欲しい…」
 だめ? と、云いたげな様子が、また愛しいというもの。少し右斜めに傾かせた表情が絶妙のバランスで男に訴える。ぴょんと括ってある髪がとちょっとだけ跳ねていた。
「……殺生丸様…?」
 そう云われ、本当に駄目と云える相手がこの世に存在するものか。マシュマロ製と思わせる柔らかほっぺたに、彼の手が触れる。両手でもって包むよう。膝をつき、恭しく彼女に跪いていた。
 このロボットの破格の微笑は、彼女の為だけのもの。マスターだけに許される贈り物で特権だった。
「悪かった、りん」
 日の光に透ける銀色は星にも勝る輝きか。けれども、もっと綺麗なものすぐ側にある。
「―――愛している」
 それから、
 言葉紡いだ唇はそっと彼女の右頬に触れていた。



 愛玩ペットとは、愛されるための玩具。いわば体の良いお人形。
 彼等にとって愛し愛されると云うことは、人間の呼吸か食事に近い。無くてはならないものなのだ。
 Love回路と呼ばれる生命維持装置。
 この絡繰りで、全てが拘束されているからだろう。生まれてより未来永劫、彼等を縛る回路は実に分かりやすいシステムだった。
 愛されればそれだけで稼働し続けられる。まず壊れることはない。けれども、一度失えば二度と動くことはない。ただの金属の塊となってしまうのだ。
 YESとNO程度に簡潔な二択は、究極な関係。
 彼等におけるのマスターは神にも等しく、絶対的な存在。だからだろう。盲目的に愛を乞う姿は、冗談抜きに愛の奴隷―――そのもの。
 これは勿論、殺生丸にも云えること。
 ただ、彼の場合は少々勝手が違っていた。本来ならば人間に選ばれるべきはずが、この男に関しては正反対。おこがましくも、自らの選択肢とした。
 五年前のレセプションで起きた悲劇は、もう説明あるまい。
 愛玩ロボである彼が、よりにもよってマスターを拒んだ所にあったのだ。



「殺生丸様、これ美味しいね」
 にこにこしながら、りんはおやつをぱくり。
 お菓子を頬張る少女は、ごく自然に自分の愛玩ロボットを見た。ただ、彼女が彼をどの程度理解しているのかは、とても疑わしいところ。犬の耳があるので、わんこさんだと……思っているらしい。
 しかし、左隣の椅子に座る相手は気にもしない。彼にとってそれが実はどうでも良い事なのか。もしくは、一計あるのか謎だが、二人の関係は良好だった。
「りん、付いている」
 そう指し示すのは、自分の口元。鏡のように真似て指さすことで、伝えているのだろう。
「うんと…ここ?」
「いや、違う」
 長めの形良い指先が伸ばされる。
「殺生丸…様?」
 そのまま少女の唇近くを触れると、黄色いクリームがくっついてきた。殺生丸お手製の、ジャガイモのスイートポテトのものだ。使うのがサツマイモではなくジャガイモなのがポイント。甘みあっさりのこのおやつが、近頃のりんの大好物となっていた。
 彼女の口元から失敬したカスタードクリームを、殺生丸は一舐めしてしまう。ちろりと赤い舌が蠢く。指先が唾液で濡れる。
 それから一言。
「……甘いな」
 と、曰(のたま)った。
 キャンバス地のエプロン姿とはいえ、しかも不細工なブタともタコとも見える謎のアップリケを付けながら、彼の仕草はノーブルともエレガントとも映った。いいや、やっぱりいかがわしい。
 黒いシャツの胸元が妖しいせいなのか。覗かせている鎖骨のせいなのか、はたまた捲られた二の腕のせいなのか。
「甘いの嫌いなの、殺生丸様?」
 ぐざりと、もう一切れをフォークで刺しつつ、りんが尋ねる。
「―――いや」
 あんぐりと大口を開けた少女は、一口でぱっくん。
 強引に口に入れたためか、再び頬にクリームが付いていた。それは、さっきよりもきわどい下唇近く。
 ―――ペロリ。
 彼女のすぐ側では光を遮るように、影法師が覆い被さっていた。ダイニングの床では小さな影と大きな影が一つのように交わる。
 そして、やっぱり一言男は曰った。
「こういうのは、美味しい」
 りんは今さっき舐められた箇所を指で触る。少しだけ湿っぽい唇。次に自分のわんこさんを見る。
「そんなに美味しいの?」
 ほっぺは熱く、ドキドキの一本調子。
「……ああ」
 頷く殺生丸の瞳は伏せられていたが、どことなく嬉しそうだった
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