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2013'05.30.Thu

オートマタ続き

こんばんは、早く寝ないと胃腸にくるかも…とか、思っている管理人です。年はとりたくないけど、とってしまう此の現実。いのちだいじにです。

 オートマタの続き。ここまで出来ました。あともう少しで一区切りなかんじです。




 二人っきりの病室で、いつものごとく彼女の側に彼が控える。気だるい午後、重く何かがしたたり落ちる手前の空模様はあまり暖かとは言えない。それでも常に適温に保たれているこの部屋は、眠くなるように温い空気に満たされていた。天井も床もベットさえも真っ白の中で、黒い液晶テレビやチェストが異質のように色彩を放つ。茶色のブラインドは、ナチュラルさを売りにした木製品。鼻腔をくすぐる甘い香りは、窓辺の花瓶に生けられた花束からかするらしい。生活感の薄い非日常的な空間で、点滴の音だけが現実感を繋ぎ止めていた。
 検温等に他人がやって来ることがあったが、おおむね二人っきりだ。いやむしろ、二人っきり過ぎる。一枚ドアを隔てられているとはいえ、どうしてこんなにも世界が違うのか。遮断された外界の音が遠い。此処が角にあるせいなのか、はたまた個室という環境せいなのか。その要因になっているだろう美貌の存在は、新品折りたたみ椅子に腰掛ける。声が上手く出せないりんの隣で、彼はその美貌も寛大さも大盤振る舞いだった。無論、男を知る者が見たならばの話だが。
『オートマタ?』
 そう、りんが問えば彼は微笑んだ。
 声のでない彼女は筆記で、目の前の男と交流を図っていた。りんが最初に覚えたのは彼の名前である。いや、銘と言った方が良いのだろうか。
「私は人間ではない」
 そう、殺生丸は人間ではあらず。人間の莫大な知識によって作られた、どうしようもない玩具に過ぎない。
『でも、お耳がないよ?』
 それから、りんは小首を傾げる。
 最初の頃は、一日の内限られた間のみしか彼と話すことができなかった。紙にペンで字を書くにも相応の体力を要するのだ。それも十日も経てば慣れしまい、ずいぶんと打ち解けもした。徐々に話す時間が増えていく。ただ、声はまだ良く出てこなかった。
 医者が言うには精神的なものなので、心が落ち着けば話せるようになるものらしい。
「私は特別製だから、外すことが出来る」
 それから殺生丸はりんの柔らかな髪の毛を手で軽く梳く。
「ここを退院すれば、いつでも見られるようになる」
『ほんとう?』
「ああ、りんの体調も随分良くなった。もう少しすれば、声も戻る」
 三日月を紡ぎ縒り合せたような銀の髪に、日輪のごとき瞳。そのどちらもが、硬質で金属めいた色彩のせいか、酷く冷淡な存在に彼を描いた。けれども、今彼が彼女に見せた微笑は特別だろう。とろりと蕩けた様は蜜を思わせ、細められた黄金がまさにそれ。
 彼の手は子供特有の滑らかな頬を撫で、輪郭をたどる。
「だから、好きなもの、嫌いなものを教えて欲しい」
『好きと嫌い?』
「そうだ」
 幼子はじっと相手を見上げる。それから、紙にゆっくり字を書いた。
『どうして?』
「ずっと一緒にいるために必要なことだからだ」
『ずっと一緒?』
「私はりんが死ぬまで側にいる。その為に必要なことなら、何でも出来る」
 それがオートマタとして愛を請うものなのか、愛玩ペットとしての常套句なのか。黒い瞳と黒い髪の少女には分かるまい。眼前の幼子は瞬きをし、殺生丸を見た。見続ける。
「りんの為なら、何でもしよう」
 畳み掛けるように、彼は告げる。
 何しろ、彼は本当に何でも出来る。ロボットは原則人間を傷つけることは出来ず、殺すことも出来ないとされている。しかし、どんなことにだって例外がつきもので、裏道は存在する。殺生丸のコンセプトには万能さがあるが、それは本当に手広い物だった。まさに、揺りかごから墓場までという奴で、過剰防衛とは随分と都合の良い言い訳だ。
 彼を造る際、碌でもない技術者が混ざっていたのだろう。でなければ、どうして愛玩ペットに要人暗殺ま出来るのだ。
 殺生丸はそれを忌々しく判じていた。全くどうして、何でも出来るのだ。それこそが忌まわしくあるくせに、己の価値であるという。こんなスペックなど、何一つ望まないというのに、だ。
 いっそ、無価値な石ころになってしまえば良いと願ってしまう。そうすれば、彼は愚かしくも繰り返される思考の渦から解き放たれるだろう。だがしかし、殺生丸は選んでしまったのだ。
 此の世の唯一つ、鉄屑になるのでは無く、唯一無二を決めてしまった。
 運命知るは神のみぞ。
「望むままに従う」
 囁く唇は哀切を皮切りに、再び言葉を紡ぐ。
「見返りに、私を愛して欲しい」
「殺生丸様?」
 口元が音を伴わず名前を綴る。
 黒髪の幼子は愚かなロボットを見つめ、それから手を伸ばした。お互いが触れあう頬の片方は温もりを帯び確かな命の脈動を相手に伝え、もう一方は人工皮膚に覆われたビスクドール。温もりを感じたところで、所詮人間を模した贋作だ。すがったのはどちらが先だったのか、秀でた額がぶつかり睫さえも重なり合う間近、吐息さえ重なる手前、殺生丸は呟く。
「愛してくれないか」
 見開いた黒瞳は黄蜜を絡めた双眸を写し、しばし閉じられた。

 やがて、

 返答は吐息のみ。
 ゆっくりと開かれる口元を相手は見入り、紡がれる言葉を拾う。
 零れた代償は、少女のささやかな願い事。

「ひとりぼっちにしないで」

 稚い我が儘は生涯叶えられるだろう。
 儚くも甘美な相手を腕に抱き、彼は艶やかな髪を梳る。類い希なオートマタはその耳朶に最愛の名を注ぎ込んだ。深い熱情を声に孕め甘さを落とし込めて殺生丸は謳う。

「りん―――私はお前だけの物だ」



 殺生丸は一日のほとんどをりんの側で過ごした。時折出かけることもあったが、その日のうちに必ず戻り殺生丸はりんの元へと帰ってくる。彼女の側こそが彼の居場所であった。しかも彼はまめで、りんにお土産を忘れない。
 前から持っていたクマさんのぬいぐるみの隣には、新参者のアヒルさんがおとなしく座っている。小ブタの姿のクッキーにイチゴの形のチョコレート。りんの新しいパジャマはシャーベットピンクにミントグリーンの水玉模様。この間看護婦さんに可愛いと褒められたパーカーは黒猫みたいに小さなお耳と鈴が付いていた。
 引き出しの中のパステルピンクの手鏡はバラ形で、りんの新しい携帯も淡いミルキーピンク。ストラップには硝子のシロツメクサと羊のチャーム。登録してあるのは殺生丸の番号だけで、そのうち新しいお家の番号も登録することになると彼は言っていた。
 そう、殺生丸はりんと一緒に暮らすのだ。ひとりぼっちのりんは、このままだと施設に行くことになってしまう。大人の社会では子供にはやはり誰か大人が付いていないと駄目なのだ。だからりんは殺生丸と一緒に暮らすのが一番なのだという。そうすれば殺生丸は限りなくりんの側にいられるし、互いの所願に添い、さらに余計な干渉を受けなくてすむとか何とか理由があるらしい。実際殺生丸はロボットだが、見かけはりんよりもうんと大人なので、耳さえなければ誰も疑いはしまい。
 本当に、殺生丸は良く出来たオートマタだった。りんはロボットの専門家ではないし、りんの両親もそういったお仕事に就いていなかったが、素人目にも殺生丸の出来映えは出来過ぎの一言に尽きるだろう。りんの知っているロボット言えばもっとユーモラスのきいたもので、決して人間とうり二つではない。それは確か、ロボットと人間を区別するためにわざと作り物めいて作ってあるのだと誰かが言っていた。
 しかしながらその実おかしな物で、区別する割に人間そっくりの物を欲しがっているものまた事実。オートマタの人気の秘密はそこにある。友達の友達の話では無いが、偉い人にはその特別製の人間そっくりのロボットで影武者をしたて、テロ対策としているという噂まである。
 その素晴らしい出来映えのオートマタが言うにはだ、りんは退院したら新しいお家で暮らして、新しい学校に通うことになるらしい。。
 それから、りんが絶対に覚えてきちんとしないといけないこと。それは殺生丸のことだった。オートマタは子供が持ってはいけない大人のオモチャ。だからりんが殺生丸の主だということは秘密で、誰にも言ってはいけない絶対のお約束なのだ。もし誰かに聞かれたら、親戚とでも言えばいいとは、殺生丸の台詞。
 とはいえ、オートマタはロボットで、確かに見かけだけ上辺だけなら人間の真似事など出来て当たり前。だが、りんとてロボットが簡単に人間の振りをできないのを知っている。普通の人は赤ちゃんとして生まれた時に出生届けを出して、戸籍を作ってもらうのだ。そういう身分を証明する物はどうするのだろうと、疑問に思ってしまう。
 殺生丸が多少かどうかは謎だが、年をとらないことぐらいは何とかなるだろう。何しろヒトゲノムをマスターした人類は、究極のアンチエイジングを追い求め、求めた果てに特殊な薬品投与と手術で叶うようになってしまった。無論、代償は保険もきかない莫大な金額と、曖昧な適合率だったが。とはいえ昔から若作りというのは一種のステータスであり、細胞レベルの不老を望まない限りある程度の年齢は誤魔化せる。
 テレビを見れば、往年の女優でありながらその美貌に衰えが窺えない人が何人も出て来る昨今だ。だから、多分きっと、そのあたりは大丈夫なのではとりんは考えていた。
 だがやっぱりりんは、僅かで素朴な疑問が沸いてしまう。
 殺生丸様はどうやって、お金を調達しているのだろう。
 問えば、殺生丸はその唇に弧を描く。
「大丈夫だ」
 何が大丈夫なのか分からずりんが首を傾げれば、大きめの掌が頭を撫でる。
「正当な要求をしているだけだ」
 一体誰にだろうと思ったが、名残惜しげに離れる指が唇をなぞっていく仕草にりんは彼が病室を出て行くのだと気がついた。
「殺生丸様」
「夜には帰る」
 声なき呼び声にオートマタは返すと、やがて部屋には少女が一人。己の代理にと贈られた犬のぬいぐるみを抱きしめて、りんは夜を待ちわびるのだった。


 正式にUPするときとか、台詞変わってる箇所あるかもですが。

 うう、もう眠いので限界なので、寝ます! ではでは~
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